邂逅 門出 いつか見た景色へ

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しばらく、懐かしい潮の香りに浸りきり、自分が何を為さねばならないか忘れていた。
気がつくと、光が自分の足元を照らしていた。その光が漏れてくる岩壁の隙間を吸い込まれるように覗き込むと、そこには、煌々と照らされ、うごめく機械と人と呼ばれるものの奇妙な動きが広がっていた。
 
これはなんだろう・・・この壁の後ろの世界がこうなっているとは・・・・岩山が続いていると思っていたのに、そこは広大な広場とそしてかすかな記憶の底に眠っていたあの広々とした海と呼ばれるものが・・・・・・

しばし、食い入るように眺めていると、機械と、人間の奇妙な動きが次第に縮小していき、同時にまばゆいばかりの光が次第に、トーンダウンしていく・・・

そして、再び暗闇の世界になり、頭上の星と、ささやく波の音が聞こえてくるだけになった。

この岩山を越せば、あの向こうの海に出られる・・・・そう気付くのに、それほど時間はかからなかった。

そして、おぼつかない足で、いや今度はその足でしっかり岩肌をつかみながら、上へ上へ昇り始めた。

下の方を見ると、あのちんけなプールは水たまりのように見え、仲間たちが黒い点になっていた。
誰も気づいていないようで、物音は波の音以外聞こえてこない・・・・・

岩山の頂上に立つと、遠くの空がほんのりと明るくなっていた。
まだ朝日が昇るには時間がありそうだが、それまでにはあの海まで行かねばと、、波の音と、潮の香りを頼りに今度は反対側の岩山を降りようとすると、壁は岩ではなく、すべすべした、あのプールの壁と同じものに変わっていた。

それが、なだらかな傾斜で下の方へ続いているようだ。その下の方は、まだ暗く何も見えない。果たしてそこにあの海というものがあるのか・・・・
波の音はその暗闇から聞こえてくる。潮の借りもその暗闇から立ち上ってくる・・・・

不安と、甘美な夢に、しばらく動くことができず、茫然と斜面の下を見つめていた。
すると、さらに空は明るくなったようで、遠くの方は赤く色づいてきた。
ぼんやりと下の方にも光が届いていくようで、何かきらめいたようにも見える・・・・
もう猶予はできない・・・・

次の瞬間、思い切って足を前に出し、斜面を滑り降りていた。
身体が暗闇の中に吸い込まれていく、風が舞いあがるように顔を打つ、停まろうとしても何もなく滑り落ちるしかない。
次第に加速し突然何とも言えぬ衝撃を受け体全体が転がった。

しばらくは、気を失っていたようだったが、顔に冷たくも、懐かしい味がする何かが触れては去っていく感触に覚醒した。

波。寄せては返すあの波。
見ると、目の前に、明けていく空の下に広がるあの海があった。
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